
2022年2月24日(木)ロシアが隣国ウクライナに軍事侵攻してから4年。イスラエルガザ地方の紛争、アメリカによるイランやベネズエラへのミサイル攻撃など、世界の平和が大きく揺らいでいます。
子どもたちには、そんな大人たちの行動が理解ができません。どうして、大人なのに仲良くできないのか…。大人たちが教えている「仲良くする」って、どういうことなのか…。
大人たちは子どもに嘘を教えているのか…それとも大人は嘘つきなのか…。
子どもたちが観ています。わたしたち大人の姿を…
「食育と発達 」
令和8年度第2回保護者学習会資料
園便りでもお伝えしたように、「食欲」は人間の三大欲求の一つで、人生の楽しみの大きな部分を占める基本欲求といえます。私たち大人も、旅行の際の楽しみといえば、その半分は現地の食材や料理を味わうことではないでしょうか。そういう意味で言えば、「おいしい=幸せ」と云って良いのかもしれません。
ところが、乳幼児期の経験によっては「食」が苦痛になってしまうお子さんが、少なからずいらっしゃいます。勿論、「食」ばかりが人生の楽しみではありませんが、大きな喜びの一つであることに違いはなく、できるだけ早い段階にその喜び=「おいしい」を知ってほしいと願います。何故なら、“欲”は成長のエネルギーでもあるからです。
食事は単純な行為ではありません。そこには、さまざまに子ども一人ひとりの個性や習性、特性が顕れ、食事場面を見るだけでもその子どもの特徴を示す多くの情報が得られるといっても過言ではありません。つまり、「食」と「発達」は切っても切れない関係にあるのです。
入園してくる園児の中に、時折、白い食材しか口にしないだったり、ザラザラした食感が苦手だったり、特定の色味や温度の物でなければ食べられなかったり、その逆だったり等のこだわり(固執)を示すお子さんがいます。
一見、それが“好き”なのかなと思われがちですが、実はそうではありません。“好き”なのではなく、それらに“固執する”ことによって“不安”を回避できると誤学習していることが原因だからです。この段階において、その子は自分が決めた物以外を口にすることを嫌がって(=不安がって)いて、本当の意味での「おいしい」をまだ知りません。
バランス良く栄養を摂ること、それは勿論大切なことですが、「食」の喜び=「おいしい」を知ることは、人生に彩りと豊かさを与えます。そのことを知っていればこそ、光の子学園では開設以来半世紀以上に渡り「食育」に力を注いできました。それは「おいしいを知ってほしい」歴代職員の篤い思いがつないできたものでもあります。
「食」と「発達」は合わせ鏡のようなもので、光の子学園では「食」の変化が「発達」に、「発達」の変化が「食」に鮮やかに反映する経験を積んできました。そういう意味でいえば「給食」は単なる「食事」ではなく、療育・発達支援の大きな柱ともいえるものです。
さて、“固執=こだわり”によって“不安”を回避する誤学習をしているお子さんに、具体的にどのように支援していくかということですが、支援の本質は心の中の“不安”を取り除くことにあります。これは、食事場面だけでなく生活場面全てに共通することで、一貫した対応がポイントとなります。
どいうことかというと、いつもと違う経験や新しい経験を与える際に、子どもの感じる“不安”に徹底して寄り添うということです。少し難しい表現を使わせてもらうなら、心理療法の一つ、行動療法の技法「段階的接近法」を応用した関わりで、あえてちょっとずつ“不安”に触れさせながら、先生(支援者)と一緒に乗り越える成功体験を積み“不安への耐性を育む”よう働き掛けていくものです。
大人がいくら言葉で「大丈夫だよ」と言ったところで、一旦、こだわること(そうすることが不安にならない唯一の方法という思い込み)を誤学習した子どもの心は、そう簡単に変わりはしません。ですから、子どもが先生(支援者)と一緒ではありながら自分の力で乗り越えたと感じられる体験を積むことが肝になります。
一個目の小さな“不安”を乗り越えられたら、一個目の“不安”はもう“不安”ではなくなり、二個目の小さな“不安”にチャレンジする準備が整います。そして、二個目の小さな“不安”を乗り越えられたら、三個目にチャレンジする準備が整います。それを繰り返していきます。
ここで注意しなければならないのは、一個目から二個目、三個目と進む際に、乗り越えさせようとする“不安”を小→中→大と順々に大きくし過ぎてしまわないことです。
『ちょっと頑張ったら乗り越えられた』体験を数多く積ませることで“安心(大丈夫)”と共に“自信(できる)”を積み上げていきます。
この考え方を食事に応用すると、食べたことのない初めての食材、例えば「スープ」を
1回目は先をスープに浸しただけのスプーンを舐めてみる。それが出来たらたっぷり誉めてその日は終わります。
2回目も同じように浸しただけのスプーンを舐めてみる。できたら誉め、その日もそれ以上の促しはしません。次の日次の日と繰り返しながらストレスなく舐められるようになった段階で、二個目のチャレンジ。
スプーンにほんの少量(1滴)掬ったスプーンを舐めてみる。出来たら誉めて終了し、次の日次の日と繰り返しながらストレスなく舐められるようになった段階で、三個目のチャレンジ。
スプーンに少量(見た目に分かる程度)掬ったスプーンを舐めてみる。出来たら誉めて終了し、次の日次の日と少しずつ促しの量を増やしていきますが、大切なのはストレスなく促しを受け容れられるようになることです。
このやり取りを通して、子どもと先生(支援者)の信頼関係が次第に確かなものになっていきます。何故なら、子どもに最初ストレスと感じられた体験が、回を重ねる毎に成功を積む機会として受け取れるように転じるからです。このプロセスで最も重要なことは、先生(支援者)との信頼関係。『大好きな先生となら、何でもできる』安心と自信を積み上げることにあります。
こうした取り組みを通して、やがて子どもが本当の「おいしい」に気付く瞬(と)間(き)が訪れます。こうなれば、しめたもの。何故なら次の食材へのチャレンジに前向きな意欲が育つからです。
この取り組みを通して子どもが得るもの。それは、「食の拡がり」は勿論ですが、何よりも“不安”を払拭して“安心”を手に入れる喜びです。
前段で「食」の変化が「発達」に、「発達」の変化が「食」に鮮やかに反映すると述べたのは、このことによっていて、「食」と「発達」は密接につながっているのです。
光の子学園の子どもたちには是非とも、「食を喜び楽しむ人生を満喫してほしい」と職員皆で願いつつ、子どもたちと共に日々の給食を迎えていることを知っていただけたなら嬉しく思います。
令和8年9月26日
光の子学園
園長 山下 学(臨床心理士)